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紺色の背景に、関所の門と、虫眼鏡のついた書類を白と青の線で描いた図
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行政書士のAI活用、許認可の下調べと申請書のたたき台はどこまで頼れる? 行政書士のAI活用、許認可の下調べと申請書のたたき台はどこまで頼れる?

AI関所 2026.10.08 約10分で読めます 合同会社てん

許認可の要件をAIに聞くと、それらしい答えと条番号がすぐ返ってきます。その答えを顧客への説明や申請書のたたき台に使ってよいのか、決めきれずにいる所長もいるはずです。

結論から書きます。AIの下調べとたたき台は論点の洗い出しまでに使います。条番号はe-Gov法令検索の現行条文で、要件は申請先の審査基準と手引きで確かめ、記名して出す書類の中身は行政書士が引き受ければ足ります。

この記事は、AI導入の判断を一緒に行う「AI関所」を運営する合同会社てんが書きました。私は行政書士ではありません。条文と総務省・個人情報保護委員会の公表資料の範囲で整理し、私の解釈は「私の読み」と書き分けています。

AIの答えがずれやすい所ずれる理由確かめる先
条番号・条文の文言法改正で条番号や文言が変わる。行政書士法も2026年1月1日の改正で条番号がずれたe-Gov法令検索で、施行日を見て現行の条文を開く
許認可の要件の細部許認可は法令に加えて、行政庁が定める審査基準で判断される申請先の行政庁が公にしている審査基準と手引き
様式と添付書類法令が定める形式に合わない申請は、補正を求められるか拒否される申請先の最新の様式と手引き。分からなければ窓口に聞く

許認可の要件を決める審査基準

許認可をするかどうかは、法令に加えて、申請先の行政庁が定める審査基準で判断されます。 AIが法令の説明を正しく返しても、それだけで下調べは終わりません。

行政手続法2条8号ロは、審査基準を「許認可等をするかどうかをその法令の定めに従って判断するために必要とされる基準」と定めています。同法5条は、行政庁に審査基準を定めること、できる限り具体的にすること、公にしておくことを求めています。

定めるのは申請を受ける行政庁です。申請先が違えば、審査基準を定めている行政庁も違います。私の読みでは、AIの答えは「法令にこう書いてある」までは役に立っても、申請先の審査基準まで正しく押さえているとは限りません。

個人情報保護委員会も、令和5年6月2日の注意喚起で、生成AIの応答結果に不正確な内容が含まれることがあると述べています。下調べは次の順で進めると、AIの答えを入口として使えます。

順番やることAIの使い方
1許認可の名前と、根拠になる法令を挙げる論点と関係しそうな法令を洗い出させる
2根拠の法令をe-Gov法令検索で開き、施行日を見る使わない。条文は自分で読む
3申請先の審査基準と手引きを読む長い手引きの要約に使い、要約は原文と突き合わせる
4審査基準で読み切れない点を窓口に聞く聞くことの一覧を作らせる

顧客に要件を伝えるのは、3の審査基準と手引きを読んだ後にします。標準処理期間(行政手続法6条)も、行政庁が定めて公にするものなので、同じく申請先の資料で確かめます。

2026年1月の改正でずれた条番号

行政書士法そのものが、2026年1月1日の改正で条番号を変えています。 改正前に書かれた資料は改正前の条番号のままで、AIの答えにも混ざり得ます。

改正したのは、行政書士法の一部を改正する法律(令和7年法律第65号)です。e-Gov法令検索で改正前(2025年10月1日施行の版)と改正後の本文を並べると、次のように変わっています。

中身改正前の条改正後の条
法律の目的/行政書士の使命1条(目的)1条(行政書士の使命)
職責(品位・法令と実務への精通・デジタル化への対応)なし1条の2(新設)
書類の作成(行政書士の業務)1条の21条の3
提出手続の代理・不服申立て・相談1条の31条の4
行政書士でない者の業務の制限19条1項(業として)19条1項(他人の依頼を受け、いかなる名目によるかを問わず報酬を得て、業として)
19条違反の罰則21条2号21条の2。法人等も罰する両罰規定(違反者と法人の両方を罰する定め)を23条の3で追加

改正前の資料が悪いわけではありません。たとえば総務省が令和7年10月10日に公表した回答も、施行前なので業務の条を「法第1条の2第1項」と書いています。今の条文で1条の2を開くと、職責の条が出てきます。

AIが「行政書士法1条の2によれば」と答えたら、業務の話なのか職責の話なのかを、e-Govの現行条文で確かめます。顧客への説明書や申請書に条番号を書くときは、施行日を見て現行の版を開いてから写します。

申請書のたたき台は使える。記名して出すのは行政書士

AIで作ったたたき台でも、申請書として出すときに記名して職印を押すのは行政書士です。 書類の中身は、記名した行政書士が引き受けることになります。

行政書士法1条の3は、官公署に提出する書類の作成を行政書士の業務と定めています。施行規則9条は、1項で法令や依頼の趣旨に反する書類を作ってはならないとし、2項で作った書類への記名と職印の押印を求めています。総務省の説明では、記名と押印の義務は電磁的記録を除く書類にかかります。

改正後の1条の2は、1項で「業務に関する法令及び実務に精通して、公正かつ誠実に」業務を行うよう求めています。2項では、情報通信技術の活用などを通じて業務の改善進歩を図るよう努めるとしています。条文にAIという語はありません。

私の読みはこうです。2項は、AIのような道具を使って業務を良くする方向を後押ししています。1項は、出す書類の法令と実務を行政書士が分かっていることを前提にしています。AIのたたき台を確かめずに出し、法令に反する書類になれば、施行規則9条1項の違反として14条の懲戒(戒告・業務停止・業務の禁止)が問題になり得る構造です。当たるかどうかは個別の事情で決まります。

たたき台の部分AIに作らせてよいもの出す前に行政書士が照らし合わせるもの
聞き取りの整理面談メモから、申請に要る事実の一覧を作る顧客の原本(登記事項・契約書・図面など)と数字・日付・名前
必要書類の一覧手引きをもとにした一覧の案申請先の最新の手引き。添付が要る書類の漏れ
記載欄の文案事業の内容や理由を書く欄の文の案審査基準の言葉と合っているか。事実と違う表現がないか
条番号・根拠の表記入れない。空欄にしておくe-Govの現行条文から行政書士が写す

顧客や業者がAIで書類を作るとき、19条の線はどこにあるか

申請者本人がAIや入力フォームで自分の申請書を作ることは、19条の制限の対象外です。 制限がかかるのは、行政書士でない者が他人の依頼を受け、報酬を得て、業として書類を作る場合です。

19条1項は、2026年の改正で「いかなる名目によるかを問わず報酬を得て」という文言が加わりました。総務省は、「手数料」や「コンサルタント料」など名目を問わず対価を受けて作ることはできないと説明しています。違反すると1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金で(21条の2)、法人にも罰金が科されます(23条の3)。

作成者が誰になるかは、総務省が産業競争力強化法に基づく照会に答えた回答が参考になります。どちらも照会された事業を前提にした回答です。

誰が、どう作るか総務省の回答・条文所長としての受け止め
申請者本人が、自分の判断で入力フォームに入力して作る作成者は本人で、システムの提供は業として書類を作ったとまでは評価されない(令和3年9月14日回答。事業者が入力も助言もしない前提)止める根拠はない。相談されたら、審査基準と手引きを読むよう勧める
行政書士でない業者が、作成の参考になる資料を作って渡す個別の資料の提供に留まる限り「作成」に当たらない。書類を作れるのは顧客か行政書士・行政書士法人だと顧客に案内するよう求めた(令和7年10月10日回答)業者から提携を持ちかけられたら、誰が書類の作成者になるのかを先に確かめる
行政書士でない業者が、報酬を得てAIで申請書を作って渡す19条1項の制限にかかり得る。名目は問わない(改正後の19条1項)AIが作ったという説明で、作成者が業者でなくなるわけではない。これは条文からの私の読み

依頼者の情報をAIに入れる前に、補助者の守秘も確かめる

行政書士法の守秘義務は、行政書士本人だけでなく事務所の補助者にもかかります。 AIに依頼者の書類を入れる作業を職員に任せるなら、その前に事務所のルールを決めておきます。

12条は、行政書士が業務上知り得た秘密を、正当な理由なく漏らすことを禁じています。19条の3は、使用人その他の従業者にも同じ義務を課し、辞めた後も続くとしています。違反は1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金で、告訴がなければ起訴されません(22条)。

個人情報保護委員会の令和5年6月2日の注意喚起は、本人の同意なく個人データをAIに入力し、応答以外の目的で使われる場合は個人情報保護法に違反する可能性があるとしています。入力する前に、そのサービスが入力内容を機械学習に使わないかを確かめるよう求めています。

依頼者の氏名や住所を消してから入れる、学習に使わない設定のサービスだけを使う、の2点を決めて、補助者にも同じルールで使ってもらいます。

よくある質問

AIに聞いた許認可の要件を、見積や顧客への説明に使ってよいですか?

申請先の審査基準と手引きで確かめてから使います。AIの答えは、確かめる論点の一覧として扱います。審査基準は行政庁が定めて公にするもので、申請先の資料が根拠になります。

改正後の行政書士法は、AIを使うことを求めていますか?

求めていません。1条の2第2項は、情報通信技術の活用などで業務の改善進歩を図るよう「努めなければならない」と定めた努力義務で、AIという語もありません。使うかどうか、どう使うかは事務所が決めます。

特定行政書士の不服申立ての書類にも、AIのたたき台を使えますか?

使えますが、確かめ方は申請書と同じです。改正で1条の4第1項2号の対象が、行政書士が「作成した」書類から「作成することができる」書類に広がりました。自分が作っていない申請の不服申立ても受けられるため、元の申請書と審査基準を読み直してから使います。

まとめ

AIの下調べとたたき台は、論点の洗い出しと文案までに使います。条番号はe-Govの現行条文で、要件は申請先の審査基準と手引きで、様式は申請先の最新版で確かめます。記名して出す書類の中身と、補助者を含めた守秘は、行政書士が引き受けます。

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この記事を書いた人

疋田 悠人(ひきだ ゆうと)です。合同会社てんの代表で、AI導入の判断を中小企業の経営者と一緒に行う「AI関所」を運営しています。行政書士ではありません。この記事は法律の助言ではなく、公開されている条文と官公庁の資料をもとにした整理です。

出典・参考

  1. 行政書士法 1条〜1条の4・12条・14条・19条・19条の3・21条の2・22条・23条の3 (e-Gov法令検索・現行版と2025年10月1日施行版・2026年10月7日確認)
  2. 行政書士法施行規則 9条 (e-Gov法令検索・2026年10月7日確認)
  3. 行政手続法 2条・5条・6条・7条 (e-Gov法令検索・2026年10月7日確認)
  4. 行政書士制度 (総務省・2026年10月7日確認)
  5. 新事業活動に関する確認の求めに対する回答の内容の公表 (総務省・令和3年9月14日回答・2026年10月7日確認)
  6. 新事業活動に関する確認の求めに対する回答の内容の公表 (総務省・令和7年10月10日回答・2026年10月7日確認)
  7. 生成AIサービスの利用に関する注意喚起等 (個人情報保護委員会・令和5年6月2日・2026年10月7日確認)
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