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社労士のAI活用、顧問先に「AIでできるのでは」と聞かれたらどう答える? 社労士のAI活用、顧問先に「AIでできるのでは」と聞かれたらどう答える?

AI関所 2026.10.07 約6分で読めます 合同会社てん

「就業規則もAIで作れるらしいけど、うちにまだ顧問は要る?」。顧問先の社長からこう聞かれ、その場でうまく答えられなかった所長は多いはずです。

結論から書きます。顧問先が自社のためにAIを使うことは止められません。AIで済む作業と、社労士に残る確認・手続き・判断を分けて示し、顧問の中身を「作業」から「確認と判断」に言い換えれば足ります。

この記事は、AI導入の判断を一緒に行う「AI関所」を運営する合同会社てんが書きました。私は社会保険労務士ではありません。条文の範囲で整理し、条文からの私の読みは、そう書き分けています。事務所の中でAIをどこまで使うかは、別の記事で扱っています。

顧問先が自社のためにAIを使うことは、止められない

社会保険労務士法27条が制限しているのは、社労士でない者が「他人の求めに応じ報酬を得て」業として行うことです。 条文は次のとおりです。

社会保険労務士法27条(業務の制限)の要旨

  • 社会保険労務士または社会保険労務士法人でない者は、他人の求めに応じ報酬を得て、2条1項1号から2号までに掲げる事務を業として行ってはならない(他の法律に別段の定めがある場合などを除く)

顧問先の会社が、自社の書類の下書きにAIを使うことは、「他人の求めに応じ報酬を得て」には当たらないと読めます。これは条文からの私の読みです。

だから「AIを使わないでください」とは言えませんし、言う必要もありません。答えるべきなのは、AIで済むことと、済まないことの境目です。

社労士に残るのは、確認・手続き・判断

AIが下書きを作れても、法律が人の手続きを求める部分と、社労士の業務として定められた部分は残ります。 顧問先に見せるなら、次の表の形が分かりやすいはずです。

仕事AIで済むか根拠
就業規則の条文案下書きは作れる—
就業規則の意見聴取と、意見書を添えた届出済まない。会社が手続きを行う労働基準法89条・90条
届出書などを行政機関へ出す手続の代行、事務代理済まない。社労士の業務社会保険労務士法2条1項1号の2・1号の3
労務管理や社会保険についての相談・指導、法令や就業規則の遵守状況の監査調べものの入口まで。判断は人が行う社会保険労務士法2条1項3号

労働基準法89条は、常時10人以上の労働者を使う使用者に就業規則の作成と届出を、90条は労働者の過半数を代表する者などの意見を聴き、その意見を記した書面を届出に添えることを求めています。AIが条文案を書いても、この手続きは会社が行います。

社会保険労務士法2条1項3号は、労務管理などの相談に応じ、指導することを社労士の業務としています。法令や就業規則が守られているかを監査することも含まれます。顧問の価値は、この「相談・指導・監査」の部分にあると言い換えられます。

聞かれ方別の答え方

よく聞かれる3つの言い方ごとに、答え方の例を決めておきます。 その場で考えるより、事務所で決めておく方がぶれません。次の例は私が整理したもので、言い回しは事務所に合わせて直してください。

聞かれ方答え方の例
「就業規則はAIで作れるのでは?」「条文の下書きはAIでも作れます。私がお手伝いするのは、御社の実態と合っているかの確認と、従業員代表の意見を聴いて届け出るまでの手続きです」
「AIで調べれば、相談は要らないのでは?」「一般的な答えはAIでも出ます。ただ、AIの答えには古い制度や誤りが混ざることがあります。御社の状況に当てはめて、今の法令でどうなるかを判断するのが私の役目です」
「AIを使うなら、顧問料を下げられるのでは?」「作業の時間が減る分は、確認と相談に回します。どの作業を御社でAIを使って行い、どこを私が見るかを一緒に決めましょう」

2つ目の答えの「AIの答えには誤りが混ざることがある」は、個人情報保護委員会も注意しています。生成AIの応答には不正確な内容が含まれることがある、としています(令和5年6月2日の注意喚起)。

顧問の中身を「作業」から「確認と判断」に言い換える

顧問先に伝える顧問の中身を、作業の一覧から、確認と判断の一覧へ書き換えます。 次の表は、言い換えの例として私が整理したものです。

これまでの言い方(作業)言い換え(確認と判断)
就業規則を作りますAIで作った案も含めて、実態と法令に合っているかを確かめ、届出まで進めます
手続きを代行します届出の期限と中身を管理し、出す手続きを代わりに行います
労務相談に乗ります社内で判断に迷う場面で、今の法令に照らして判断を手伝います
法改正をお知らせします改正のうち、御社に関係するものだけを選び、何を変えるかまで伝えます

顧問料をどうするかは、顧問契約の内容と事務所の方針で決まります。この記事は料金を決める根拠にはなりません。言い換えは、顧問先との話し合いの材料として使ってください。

よくある質問

顧問先がAIで作った就業規則を持ってきたら、どうしますか?

下書きとして受け取り、89条の記載事項が足りているか、実態と合うかを確かめます。そのうえで、意見聴取と届出の手続きを案内します。

AIで社労士の仕事はなくなりますか?

下書きや調べものの時間は減ると考えられます。一方で、社会保険労務士法2条が定める手続の代行・事務代理・相談・指導は社労士の業務で、労働基準法が定める手続きも人が行います。仕事の中身が、作業から確認と判断へ移ると考える方が実態に近いはずです。これは条文からの私の見立てです。

事務所でもAIを使ってよいですか?

使えます。下書き・要約・調べものの入口までを任せ、提出の手続や相談への回答は社労士が確認してから出します。線引きの表は別の記事にまとめています。

まとめ

顧問先が自社のためにAIを使うことは、社会保険労務士法27条の制限の外にあると読めます。答え方は、AIで済む作業と、社労士に残る確認・手続き・判断を分けて示すことです。顧問の中身を「作業」から「確認と判断」に言い換え、聞かれ方別の答え方を事務所で決めておきます。

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この記事を書いた人

疋田 悠人(ひきだ ゆうと)です。合同会社てんの代表で、AI導入の判断を中小企業の経営者と一緒に行う「AI関所」を運営しています。社会保険労務士ではありません。この記事は法律の助言ではなく、公開されている条文と官公庁の文書をもとにした整理です。

出典・参考

  1. 社会保険労務士法 2条・27条 (e-Gov法令検索・2026年10月7日確認)
  2. 労働基準法 89条・90条 (e-Gov法令検索・2026年10月7日確認)
  3. 生成AIサービスの利用に関する注意喚起等 (個人情報保護委員会・令和5年6月2日・2026年10月7日確認)
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